ガラスとヘチマの新種
スーパーに生もずくの新物が並ぶようになって、春到来の兆しです。
気のせいか、例年の今頃はもう少し暖かかったと思いますが、朝晩はヒンヤリするので訪沖の方々はご注意を。
BLUE SEAL牧港本店一時休業
沖縄のアイスクリームの老舗BLUE SEALの牧港本店は、創業後60年間その姿をほとんど変えていなかったそうですが、今月末をもってリニューアルのため一時休業するとのことです。
60年ということは私と同い年ということで、私も東京から通っていたころから数回行ったことがあって、老朽を感じさせない建物でしたが、見えないところでお疲れだったんですね。
昨年の11月にウチナーンチュの友人が現在の滞在地タイから一時帰国していた際に会って、彼が牧港の本店に行きたいというのでご一緒しました。
彼もただの思い付きとのことでしたが、虫の知らせだったのでしょうか。
たまたまの出来事でしたが、最後にその姿を間近に見ることができて得した気分です。
リニューアル後のオープンは、2024年夏とのことです。
軽石で黒いガラスを
もう過去の話になっている沖縄へ漂着した大量の軽石問題。
当時は白い砂浜全体や漁港内が軽石で覆われていたような状態でしたが、国や県よりも漁協や地元の人たちがすぐに動いて、終わりの見えない中で毎日毎日少しずつでも回収し始めていたのが印象的で、最後は自治体が重機を使い県全体で2万立方メートル、全国の1/4の量を回収したそうです。
今では海面を浮いているものは殆んど見られないものの、海底に沈んでいる軽石はまだ結構残っていて、自然に任せるのか新たな手を打つべきかを検討中とのことです。
当時は「天災」であった軽石ですが、その軽石をガラスの原料として新しい琉球ガラスづくりに挑戦したのが、うるま市の「再生ガラス工房 てとてと」の松本栄さん。
試行錯誤の末、今までにはない黒と緑のグラデーションが美しい琉球ガラスを生み出しました。
軽石をガラスの材料に使えるようにするには、粉砕や洗浄と乾燥を繰り返して最低でも2週間はかかるそうですが、クラウドファンディングで小さい機械を購入し手作業を軽減することで、一定量の製作を可能にしたとのことです。
また、そのノウハウを他の作家たちに無償で公開、共有し、今では糸満の琉球ガラス村の作家たちも新し作風に取り入れているとのこと。
軽石を多く含むと黒く、少量だと深い緑色になる不思議なガラス素地。
松本さん曰く「天災ではなく天財です」と。
素敵です。
美らへちま
こちらは黒ではなく白の話題。
糸瓜(へちま)がタワシにしか使われない内地と違って、沖縄では普通の食材です。
ウチナーンチュでも「土臭い」と敬遠する人はいますが、私は大好きな食材の一つです。
調理方法は色々で、旬である夏季の新鮮なものを使えばその「臭さ」というものも感じません。
私が一番好きなへちま料理は「ナーベラーンブシー」。
へちま(ナーベラー)の味噌煮(蒸し煮=ンブシー)です。
沖縄独特の甘めの白味噌を使うのが一般的な味付けですが、私が以前に石垣島の食堂でいただいた、きっと八丁味噌も加えてある赤味噌のナーベラーンブシーが最高に美味しくて、今でもその味が忘れられません。
ソウルフードではあっても料理人にとっては難点が幾つかあるそうで、①熱を加えると白い部分が黒っぽく変色する、②収穫期が5~11月なので夏季しか提供できない、③極端に曲がっていると使いづらい、だそうです。
生産者側としても、曲がっている生産量の半分は商品にならず食品ロスとなるそうです。
そんな沖縄のへちま事情に救世主が登場しました。
その名も「美らへちま(ちゅらへちま)」。
県農業研究センターで開発された改良種で、①熱を加えても黒ずまない、②収穫期が11月から6月、③曲がりが少ない、と難点を全てクリア。
黒ずまないのは農薬等ではなく、原因となる酸化酵素を含まないからだそうで、また人工授粉に依存していたやり方を蜂による自然受粉に置き換えたととのことで労力削減となり、まさにスーパーへちまです。
肝心なお味は、生で食べても臭みなく甘みすらあるそうで、言うことなしですね。
これからは夏だけの料理ではなくなりそうですし、生産者も全国の食卓にもその味を広げていきたいとのこと。
ちなみに、沖縄の言葉には「ンブシー」のような「ん」から始まるものが沢山ありますので、しりとりが終わらないという笑い話があります。
もっというと、小さい「っ」や「ぅ」から始まる言葉もあるそうで、どーやって発音するんだろか?
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